長襦袢の間違い


 着物を着る時には必ず長襦袢を下に着ますが、今回はこの長襦袢の決まり事について詳しくお話したいと思います。
 まず長襦袢の話をしておこうと思うきっかけとなったのは、着付けの仕事に従事されている何人かの方から、以下のような報告があったからなのです。着物を着る暮らしが多かった時代には、全く考えられなかったことが私の耳に入るようになりました。



長襦袢の間違い


 それは結婚式場などで、黒留袖や色留袖を着られるご親族やお仲人の方が、長襦袢をいっしょにお持ちになるときに、色のある長襦袢を気にもせずに持って見えるので、着付ける方は唖然として「式服には白の長襦袢なのですが、、、」と申し上げると、知らなかったと驚くより「それでよいですから」と、こともなげに言われるので、仕方なしに色の付いた襦袢を留袖の下に着せなくてはならないハメになってしまうと言うお話しなのです。家には白の長襦袢もお持ちなのかもしれませんが、襦袢なら何でも良いとお考えになるのかもしれません。

 こんなことは、すこし前なら考えられなかったことで着せる方も恥ずかしい気がするそうです。私達、着物の仕事に従事するものが、当たり前で常識と考えていることが着物離れの進む中で、こんなことまで分からなくなってしまったのかと、いささかショックな報告でした。
 式服をお召しになる方はミセスが多いはずです。黒留袖は新郎新婦のお母様か身内のミセスかお仲人婦人です。社会的な常識は踏まえていられる年代です。そのような年代の方がすでに分からなくなっていること自体が問題です。
 もう一度長襦袢について確認して整理してみる必要があります。ごく常識的なことを申し上げますので基本に立ち返って考えてみましょう。
 長襦袢と着物の関係について、どの着物にどんな長襦袢を合わせるのか再認識していただければと極基本的な分類をして表にしてみましたので参考にしてみて下さい。

長襦袢と着物の関係表

着物の種類

適した長襦袢

黒留袖、色留袖、喪服
白地の長襦袢を必ず着ますが、襦袢の地紋がお目出度い吉祥文様の時は喪服には避けます。どちらにも使用したい長襦袢の場合は当たり障りの 無い地紋の長襦袢にしておきます。例としては「波の柄」「花の柄」等でしょうか。
訪問着、付下げ、紋付き 無難に考えます。薄い地色の着物も多いですし、きつい色よりやわらかな色が相応しいでしょう。無地の淡い色、暈かしで濃淡に染まっている 綺麗な感じのもの、絞りが入っている総じて品の良い襦袢が良いでしょう。
小紋 薄い地色であれば、上記の様な長襦袢を使用しても良いですし、濃い色の着物であれば中間色の色の長襦袢か着物に合えば柄のある長襦袢でも楽しいかもしれませんね。
紬類

紬を着る場合は薄すぎる色の襦袢より、やや濃い色のものがはっきりとしてお洒落ですのでオススメです。紬は地味な色合いのものが多いですから表に対して色映りの良い色を着て楽しんでみてはいかがでしょう。または面白みのある小紋柄の襦袢を着た り、個性的に見える装いにしてもよいでしょう。例えば柿朱、アライ朱、からし色、紫色など少し冒険をして普段着ならではのお洒落も紬類を着た時の楽しみです。濃い色の襦袢を作るのは淡い色でもう古くなってしまったり、派手になった襦袢を染め直して利用するのもまた一考かと思います。

振袖 振袖の襦袢は大事です。お袖が長いので表地に対して襦袢の素材が余りにも軽すぎると重みが無いために着物から長襦 袢のお袖が飛び出てしまいがちですから、品質の良い襦袢をお薦めします。振袖は長襦袢がとても目立つので良い襦袢を用いていますと着物も良く見えるものです。地色は表に合わせて品を良くします。暈かしのものも良いでしょう。

 



まとめとして


 以上、大体のことは述べましたが、着物が夏物になればまた長襦袢の素材も夏物に準じて行きます。本当に基本となることだけを申しましたので、この事項を踏まえていろいろバリエーションを楽しんでみて下さい。
 長襦袢は下着と考えて1枚だけで間に合わせれば傷みも汚れもします。洋服の下のファンデーションを1枚でいつも間に合わせる方はいないでしょう。何枚かは着物に合わせて持って頂ければと思います。それから最後に、着物と長襦袢の袖丈はぴったりと合わせておくことも大切です。

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