5月に装う3種の着物



 5月は初夏ですが、遅い春とも考えられてつまり暮春の範疇にも入ると思えば、初夏の日差しもあり、メイストームの日もありと、季節の変わり目で9月と同じく装いにも迷うかもしれません。
 迷われたときの指針になれるように、様々な場面を想定して考え臨機応変に対応して行きましょう。
 今回は、着物の種類と着て行く場面や当日の天候も含め、5月の着物について改めて考えをまとめたいと思います。


一般的な考え



 まずは常識的な基本について述べて行きますのでこれを念頭に置いて考えて下さい。世間一般では5月末日までは袷の着物を着るというのが昔から常識のようになっています。袷ではまずいかしらと思う事はありません。

 余り疑問を持たれない方、5月だから袷だと思われている方は間違いではありませんので着用して下さい。またお茶の世界では末までは袷をを着るべしと言う考えは定着していますので、右へ習えと思ってお茶の先生の考えに従った方が無難でしょう。

 ここからはもう少し着物ライフを楽しむ方へのレクチャーとなります。5月の着物について悩まれる方は参考にして下さい。よりお洒落度を高めたい方へのアドバイスです。時代に即した考えも組み込まれています。


5月に装う3種の着物



 5月に着ても良い着物は袷、単衣、紗袷わせの3種類です。袷は前に述べた理由からで特に問題はないのです。ここで最も気になるのは単衣です。

単衣
お召しの織物に燕の柄、初夏に着る単衣

 5月は気候の変化が激しく日によっては10度ぐらいの差はあります。25度を過ぎた日は夏日といわれますが、こんな日に袷を着たら汗をかいてしまいます。
 体感で暑いと感じた日には単衣を着るようにするのが自然だと思います。
 単衣は裏がないし当然、長襦袢も単衣になるのでフーフー言って我慢してまで袷を着る必要は全くないと思われます。単衣で軽やかに外出した方が良いでしょう。


紗袷わせ
麦の柄が透けて見える紗袷わせ

 次に紗袷わせの着物ですがこの着物は、5月における究極のお洒落着で誰でもが持っているわけではないのですが、この着物が最も胸を張って着られる5月の着物といえましょう。見た目はしっかりと袷になっているのです。
 この着物があれば5月の外出は着物で迷うことはありませんので、着物好きでお洒落度のグレードを高めたい方、他の人と差をつけたい方にはおすすめです。

 ただし紗袷わせは6月は着る事は出来ません。贅沢と思われる方もいられると思いますが、5月はとても季候が良く案外出番も多いです。


 このように3種の着物が入り乱れる5月はなかなか興味深いです。踊りの会、観劇、結婚式、種々の集いも盛んに行われる時期なので着物をよく着られる方にとっては着ていく機会も多いのです。
 因みに私は踊りの会などで会場に出掛けたとき、3種類の着物が見られるのでとても楽しかった記憶があります。

気温と体感に合わせて考える



 涼しく気温が低い日なら袷でも良いでしょう。ちょっと暑苦しいと思ったら単衣で良いです。汗かきさんは単衣を着て下さい。袷の時はなるべく重苦しくない組み合わせの地風と色気に気を遣って下さい。
 いくら袷で良いとはいえ、真冬を思わせるような組み合わせは暑苦しいと思います。爽やかさを感じさせる袷にして下さい。単衣を着る場合は袷の時用の帯でも良いのですが、もし単衣仕立ての帯をお持ちならそれも活用して下さい。

 紗袷わせを着る場合は全く悩む事はありません。紗袷わせほど5月に相応しい着物はないです。この場合、帯と小物の全ては夏物にして下さい。紗袷わせについてもっと詳しく知りたい方は、以前のレクチャー「光と風のキモノ」を参考にして下さい。

 以上、3通りの種類の着物を着るという5月はTPOと気温、体感に合わせてこれもコーディネートの楽しみと思って、より上級なお洒落感覚を磨くチャンスにして下さい。
 他の方がどんな装いをしているかを見るのも参考になることでしょう。爽やかな5月、緑の風と光溢れる初夏の着物ををおおいに楽しみましょう。

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